● 母に刺さった金目鯛のホネ
- 2008.02.06 Wednesday
- 12:24
ある日のこと、60代の母が、のどに魚のホネを刺してしまいました。
近所の人に「耳鼻咽喉科に行けば、カンタンにとってもらえるよ〜」と言われたというので、一緒に総合病院に行ってきました。
母は、相当緊張していたようで、問診票を書く時、エンピツを持つ手が
すこし震えていました。
問診票より‐Q.どのような症状ですか?
母「の、ノドの違和感・・・かなっ?」(すがるような目で)
私「イヤ、具体的に『魚の骨が刺さった』って、書いたほうがいいよ」
Q.いつからですか?
母「水曜の夜から」
私「ええっ?2日間も、よくガマンしたね!」その日は金曜日でした。
母「痛いけど、なんとか食事もできたよ」
ここで看護婦さんが来て、
「(刺さった骨の)魚の種類も書いといてくださいネ〜」
と、にこやかに言い残して、去って行きました。
母「金目・・・ダイのタイって、どういう字だっけ」
私「魚へんに、一周するのシュウ」
母「金目・・・稠」
私「それ、のぎへんだよね」
母「ああっ!恥ずかしい〜」
母さんや、そんなにキンチョーせんでも・・・。
そして、ついに、呼ばれました!
看護婦「○×さ〜ん」
行ってみると、20代に見えるとっても若い男の先生だったので、
私も母も、(うわーやだなァ!)と瞬時に思ってしまいました。
お医者さんって、ある程度年取ってて欲しい職業ナンバーワンです。
そばでは、看護婦さんが、黒くて細いゴムチューブのような内視鏡を
ささげ持って立っています。
母は、数日たっても刺さった魚の骨が取れないので、
のどの切開をしなければいけないかと恐れていました。
医師「あ、それ(内視鏡)はまだいいから。置いといて。見てみますね」
母ののどを覗き込んだお医者さんは、小声で「あっ・・・」とつぶやきました。
そして「ちょっと、見てみてもらえますか?」と私を手招きしました。
「はいっ!」私は、お医者さんとアタマを突き合わせるように、
母の口の中を覗いてみて、絶句。
のどちんこの左わきに、真っ白な太い骨がキバのように、
2センチ近く突き出ていたのです。
(こ、これは、シロウトでも取れそうなほど目立っている・・・。
め、目立ちすぎだ〜!)
こんな状態で、受診まで普通にご飯を食べていたというので、
二度ビックリです。
お医者さんは、「ね?」と私に目配せすると、ピンセットを取り、
ほいっと骨を抜いてくれました。椅子に座ってから1分後のことでした。
医師「オワリです」
私 「わぁ〜」思わず拍手、パチパチパチ。
看護婦さんも「良かったわぁ」と笑顔で拍手、パチパチパチ。
内視鏡を使うような大事でなく、安堵しました。
すると母ったら、お医者さんのピンセットを持つ手に手を伸ばして、
「すみません、それ、記念にください!」
医師「ええっ?これを?じゃあ、ガーゼを持ってきて」
ガーゼを取りに行く看護婦さん。
お母さんや・・・抜けた歯じゃないんだから。
骨を大事そうにハンドバックにしまう母の表情は晴れ晴れとしていました。
なんでも魚の骨は、80%くらいが、のどちんこの両脇あたりに刺さるのだそうです。
それより奥に刺さる人は、けっこう、かなり不運な人のようで、
全身麻酔をしたり、内視鏡やったりという症例は、ほとんどないそうです。
なんにしても、刺さった魚の骨を自力で取ろうとして無茶すると、ノドを傷つけたり、深く埋めちゃったり、炎症を起こしたりするので、痛みが続くようなら早めに受診してほしいとのことでした。
結局のところ、大事にしまった骨は、母のハンドバックの中で行方不明に
なってしまいました。後日、こんどは指に刺さったりしないと良いのですが。
(メルマガバックナンバー:今週の好き勝手バナを一部改変―絵と文:新井佑朋)
※参考書籍「のどちんこの話」―のどちんこのことが、とても詳しく書かれています。