● 「梅丹(めいたん)サプリから禁止薬物検出!」 薬剤師として思うこと
- 2016.04.22 Friday
- 16:45
自転車連盟オフィシャルスポンサーの梅丹本舗(めいたんほんぽ)製
公式サプリメントから、WADA で禁止している 物質の一つである「ボルジオン」の含有が確認されました。
※WADA=世界アンチ・ドーピング機関(World Anti-Doping Agency)
※ボルジオン=(自然界にも存在する)蛋白同化ステロイド
日本自転車競技連盟(JCF)は、今年、2016年4月11日に同社から
ボルジオン検出の報告を受け、自転車競技の選手に同社の製品を摂取
しないように通達しました。
「梅丹(めいたん)本舗」の松本喜久一社長(53)は4月21日、
大阪府摂津市の同社で会見し謝罪しました。
社長はドーピング検査でリオデジャネイロ五輪代表への影響次第では
「腹の切り方を考えなければ」と悲壮な表情を見せました。
今回の検査は、ふるい分け検査の段階で、
確定検査の結果が判明次第、改めて発表するとしています。
選手からステロイドが検出される可能性については「分からない」
としています。(4月22日現在、結果待ち)
梅肉エキスを配合した「トップコンディション」は、
日本自転車競技連盟(JCF)のオフィシャルスポンサー梅丹本舗が
販売している、公式サプリです。
いつも選手の控室にあって、自由に手に取れる状況にあったそうです。
それに、ドーピング禁止薬物が含まれていたことがわかり、
製造販売元である、同社の社長が会見し謝罪しました。
このニュースを聞いて、あなたは、どう思われますか?
私の周囲では、
「梅丹(めいたん)やっちゃったな・・・」「選手がかわいそう」
「責任重大」
「違法薬物の混入か。一体何を混入させたんだろうか?」
「えっ梅〜?梅エキスが由来なの?じゃあ、梅干しもダメなの〜?」
という声が聞かれました。
オリンピックを目指す、若手自転車競技者の親は
「どうしてくれるんだ」と怒りました。
スポーツ新聞の記事によれば、
『(梅丹本舗の)社内では以前から「日本代表選手も口にするものなので、
成分などについて第三者の検査が必要」との議論をしてきたが、
適切な検査機関が見つからず、JCF(日本自転車競技連盟)からの
指摘もなく、野放し状態となっていた』(2016/4/21 スポーツ報知)
公式サプリに禁止薬物が含まれるのは、前代未聞だそうです。
ごく普通の感覚で、このニュースを観たら・・・。
梅丹という会社とその製品に、グレーな印象を持ちませんか?
まったくそんなことはありません。
まず、事実として、一般の方がこの梅肉エキスをのむことについては、
何の害もなく、健康維持に役立つ良質な製品ということです。
その上で、オリンピックの選手が、ドーピング検査にひっかかるのかどうか。
そもそも、アスリートはのんではいけないレベルの商品だったのかどうか。
その結果は、現在はまだ出ていません。
(わかり次第、同社が発表するそうです)
今回、梅丹の「古式梅肉エキス」とそれを含む「トップコンディション」
から検出された、蛋白同化ステロイドの一種であるボルジオンは、
故意に混入したものではなく、梅肉エキスに含まれていたもの由来である
ということです。
まずは、梅肉エキスの作り方を確認してみましょう。
青梅4〜5kg(青梅は毎年6月上旬頃に出回り始めます)
青梅4〜5kからで、80〜100gの梅肉エキスができます。
つまり、青梅を50分の1程度に煮つめた濃縮エキスが、梅肉エキスです。
その梅肉エキス1gに、推定0.00005mgのボルジオンが含まれていたのです。
梅肉エキス1日の摂取量3gあたり、0.00015mgのボルジオンが含まれます。
ボルジオンは、治療目的では一般的に 1 日 10 〜 50mgを経口、注射などの
方法で投与します。
ドーピング目的では、1 日 100mg 〜 2500mg を投与するそうです。
つまり、3gの梅肉エキスに含まれるボルジオン(0.00015mg)と、
治療目的のボルジオン(10mg)の間には、6万倍もの開きがあります。
梅肉エキスをかなり多めにとっても、筋肉増強効果は期待できません。
そもそも、こんな微量でドーピング陽性が出たら、悲しすぎます。
ドーピング陽性に出るのか、否か。これは結果を待つしかありませんが。
例えば、です。
治療量のボルジオンを500mLの液体に例えると、
6万分の1っていうのは、0.008mL=8マイクロリットルです。
目薬1滴のさらに5分の1くらいです。
ものすごく、微量です。
本当にこれで陽性が出るのだろうか?
ドーピング効果が得られない、薄すぎる濃度で、
もしも、ドーピング検査陽性と出るのなら・・・。
競技者の方も、梅丹本舗さんも気の毒としか言いようがありません。
梅丹本舗の古式梅肉エキスは、良い製品です。
多くの人が、長年愛用している日本の伝統的な梅肉エキスです。
青梅を50分の1に煮つめただけです。
何もわざわざ違法薬物を添加、混入したわけではありません。
(今回は、諸問題は抜きにして、成分の濃度についてのみ考えました)
ましてや、梅干しもダメなのか?なんて考える人までいますが、
梅干しなんて、ぜんぜん問題にはなりません。
梅干しおにぎり、(常識の範囲内で)バンバン食べてください。
さらに、ネットで見かけた意見に、同社の社長が謝罪している姿を
「ふてぶてしい」と表現したものがありました。
感じ方は人それぞれですが、
リオ五輪への影響次第では「腹の切り方を考えなければ」という
悲壮なコメントを聞いて、
私は気の毒としか感じられませんでした。
1日3gの梅肉エキスでは、ドーピング検査陽性にならないと信じたいですが、万が一なるとしたら、基準がおかしいと思います。
(繰り返しますが、現在は結果待ちです。
確定検査の結果が判明次第、梅丹本舗が改めて発表するとしています。)
(公式サプリとなる時に、検査するべきだったということについては同感ですが、日本国内にWADAの国際基準を満たした検査機関があればいいのに??と思いました。)
2016年6月6日 梅丹本舗から続報が出ました。
詳細は同社のHPでご確認ください。
(製品名) (推定含有量)
「古式梅肉エキス」 10〜20ng/g
「トップコンディション」 1〜3ng/g
※ ng = 1g/1,000,000,000(10億分の1グラム)
極めて微量すぎるほど微量のボルジオンが出ました。
それでも、アスリートには推奨しないことを決めたそうです。
こんなに微量の成分でね・・・。